棚卸で固定資産が見つからない問題。現場と経理の責任所在を明確にするには?

2025.08.13 2026.01.08 経理部門向け
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固定資産の棚卸作業における不備は、企業の資産管理に深刻な影響を及ぼします。特に、現場部門と経理部門の責任範囲が曖昧だと、現場部門の管理意識が弱くなり、いいかげんな報告や見つからない資産の発生につながる可能性があります。さらに、状況が悪化すると紛失しても気が付かないリスクが高まります。
本記事では、現場部門と経理部門の責任を明確にし、見つからない資産の発生を防ぐための対策について解説します。
この記事で分かること
  • 現場部門が完了申請を残して、部門として報告をあげるというワークフローを徹底することで、責任所在を明確化できる。これによって意図的な嘘をつかない限り、経理部門の責任にはならない。
  • 不備をなくす、モノをなくさないためには、経営層に対して「どこの部門がどのくらいなくしたのか」という事実をレポートすることが重要。部門ごとの不明資産を明らかにし、レポーティングすることで、会社の資産をどこの部門が何をなくしたのか経営者は見ることができ、なくした部門へ注意喚起をすることができる。

資産が見つからなかったときの責任はだれにあるのか

「帳簿上では存在しているはずの固定資産が、実際にはどこを探しても見つからない……。」
棚卸の時期にこんな状態になってしまい、焦ったことがある方は結構いるのではないでしょうか?

このような問題を起こさないようにするためには、その原因を明らかにすることが大切です。 そこでまずは、 固定資産の棚卸におけるよくある課題や、見つけられなかった所在不明の資産が発覚した際の責任はだれにあるのか、といった問題について解説します。

固定資産の棚卸におけるよくある課題

固定資産の棚卸においては、「現場部門と経理部門の責任範囲が明確でない」という課題があります。
責任範囲が曖昧だと、所在不明の資産が発生するリスクが高まる原因となります。というのも、「大事な資産が見当たらないけど、自分の責任かどうかわからないし別にいいか……」といった考え方になりやすいためです。

責任範囲が曖昧になっていることの本質的な問題は何でしょうか?それは、棚卸作業の依頼が経理部門から現場部門への依頼ではなく、担当者間の直接的な依頼になってしまっていることです。

この背景には、「棚卸は手間がかかる作業で、なるべく関わりたくない」という現場部門の上長の姿勢があります。また、経理部門としても、各部門のメイン業務ではないスポット的な作業を依頼する立場であるため、強い指示を出しにくいという側面があります。

その結果、現場担当者がミスをしたり不十分な報告をしたりしても、部門として作業した結果ではなく、個人として対応した結果とみなされてしまいます。一番の原因は上長が関わっていないことであり、それゆえに部門としての対応となりません。また、そうした状態で経理部門が指摘をしても「指導の仕方に問題がある」と責任のすり替えが行われてしまい、責任の所在が曖昧になってしまいます。

経理と現場の責任所在の明確化をするためには

この「責任所在がどこにあるのかわからない問題」を解決するためには、現場担当者が直接経理に報告するのではなく、部門として棚卸の結果を報告することが重要です。その手法としてはワークフローの導入があります。

ワークフローを活用することで、経理部門は現場部門の上長の承認を必ず得たうえで報告を受け取る形にすることができます。上長の承認があることで、棚卸結果の内容は良くも悪くも現場責任として扱われ、仮に所在不明な資産があったとしても責任は現場にあるということが明確になります。

この手順を徹底するとどんなことが起こるでしょうか?

例えば、現場担当者が実際には棚卸を行っていないにもかかわらず、システム上で「すべての資産が確認できた」と報告したとしましょう。この報告を現場の責任者が承認した場合、部門全体が虚偽報告をしたということになり、会社としては背任行為であるとさえ受け取れる内容になります。現場部門の問題であることが明確であれば、経理担当側の責任を問われることはありません。

こうすることで責任の所在を明確にでき、不毛な責任の押し付け合いも避けることができます。

そもそも所在不明の資産の発生を防止するためには

責任所在の明確化についてはご理解いただけたと思います。

とはいえ、そもそも所在不明の資産を出さなければ、現場部門が責任を問われることもなく、棚卸もスムーズに進みます。ですから、所在不明の資産が発生させないことが最善の方法です。

では、どうすればそれを防げるのでしょうか?

所在不明の資産を含めた棚卸結果のレポーティングが重要

実はその方法はシンプルで、責任所在を明確にしたうえで、経理が各現場の棚卸結果をまとめてレポート化してあげればよいのです。

棚卸での資産の「あり」「なし」は現場部門の責任において確認されるものであって、経理はその結果を報告するのが仕事です。この点を徹底しましょう。

ただし、単に結果を羅列しただけのレポートを作成してもあまり工夫がありません。そこで、部門ごとにその結果を比較できるような一覧表にすると効果的です。これにより、「○○部門は所在不明の資産(不明資産)がゼロだが、△△部門は多く見つかっている」といった状況が可視化されます。

この結果は各部門長の管理能力を示す指標にもなります。所在不明な資産が多くある部門は、統制管理が適切に行われていないということがはっきりとわかってしまうので、棚卸結果が部門長の管理能力値、と言い換えてしまってもあながち間違いではないかもしれません。

さらに、棚卸結果のレポートを経営会議で報告すれば、その効果はより大きくなります。組織の上の人間ほど、より自分の上司からの評価を気にするため、真面目に棚卸に取り組むようになります。

例えば役員会で、営業部門の取締役が「棚卸をきちんとできていないのではないか?」という指摘を受けたら、その取締役は営業部長を指導し、営業部長は営業課長に指導を入れるといった流れが生まれます。中間管理職にとってはツライですが、企業内の統制管理としてはこの流れが適切であり、こういった行動が「資産管理をきちんとする」企業文化の醸成につながるのです。

ちなみに、もし経営層が会社の資産を失くしてしまう部門を問題視しないのであれば、労力をかけて資産管理を行う意味はあまりないかもしれません。そのような会社は資産管理などする意味がないので、時間をかけず棚卸作業を適当にさばくのが経理担当者としての最適解です。それによって何か問題が発生したとしても、一番責任を負うべきは会社の資産管理を軽視している経営層にあると言えるからです。

まとめ:モノをなくさない企業文化をつくろう

ここまで見てきたように、所在不明の資産の発生は経理担当者ではなく現場部門の責任とすべきですが、現実にはその責任範囲が曖昧になっているケースも少なくありません。

そのような場合には、現場部門と経理部門の責任を明確にするために、適切なワークフローを構築し、現場の上長の承認を経たうえで棚卸の報告を受ける仕組みにすることが重要です。レポーティング体制を整えることで、より管理意識の向上につながります。

今ある資産を大事にしない会社は、将来的にきっと痛い目に遭います。モノをなくさないための仕組み、そして企業文化をつくり上げて、固定資産の棚卸を適切かつ効率的に行えるようにしましょう!

この記事の監修者

古畑 剛(Furuhata Tsuyoshi)

古畑 剛(Furuhata Tsuyoshi)

代表取締役

株式会社アセットメントの代表取締役。 2013年10月の会社設立と共にサービスの提供を開始した「Assetment Neo」は、現在800社・80万人が導入している。